喫茶店のコーヒー

豊かな時代に愛される「食」

現在大人気のパンケーキの魅力といえば優しい素朴な甘さはもちろん、その美味しそうな見た目も挙げられるでしょう。定番のシンプルでオーソドックスなパンケーキ、こんがり小麦色に焼けたものにシロップとバターを添えた、昔ながらの喫茶店などにもよくあるようなシンプル一皿も、その見た目は食欲をそそります。ふんわり熱々のパンケーキの上には甘いシロップと蕩けたバターがじわりと染み込み、香ばしい匂いが広がるでしょう。プレートの上に乗ったそれを目にしただけでも、早く食べたくなってしまう、不思議な魅力があります。

食べ物の良し悪しの基準とは、当然ですが第一は「味」です。食品の加工技術や質は日々向上しており、今時普通に手に入る食材や料理はどれも一定レベルの基準をクリアした美味しいものばかりで、むしろまずい食べ物の方が少ないのではないでしょうか。かつて日本が今ほど豊かではなかった頃は、物資の少なさ、流通インフラの未発達などの事情で、食材の調理方法や味付けにも限界がありました。そんな食糧不足の時代では、そもそも味にこだわる余裕すらなかったでしょう。見た目などもちろん二の次で、とにかく食べられれば良い。現代の食事情に比べれば、その水準は随分と低かったはずです。

しかし、幸運なことに日本は豊かになり、特に「食」については昔とは大きく変わりました。誰でもどこにいても美味しいものが食べられるようになったのです。飽食による大量の食材廃棄などの問題もありますが、人々が食についてより良い「味」、さらに見た目などにまでこだわるようになったのは日本が豊かになったからだと言えるでしょう。

中でも近年のパンケーキブームは、豊かになった「食」の象徴と言っても過言ではありません。焼きたての香ばしく優しい風味、バターの溶ける匂いなど、パンケーキは味覚だけではなく嗅覚からも食欲を刺激してくれるでしょう。そしてもうひとつ大きなポイントが、プレートの上にふわりと収まった綺麗な見た目です。食べ物の見た目にこだわる余裕ができた現代だからこそ、焼きたての色、まるくて優しいフォルムの美味しそうなパンケーキが特に人気を集めているのです。

人は食べ物を前にした時、実際に舌で味わうよりも先にその料理の見た目を味わう事になります。見た目が良ければ良いほど、味への期待も高まるでしょう。むしろ、今や「食」の価値は味に加えて見た目も必要不可欠な要素なのです。パンケーキの見た目はその優しい味わいをよりしっかりと感じさせてくれるでしょう。